サッカーの試合を観戦していると、様々なポジションの名前が出てきます。フォワードやトップ下、サイドバックなどフィールドでプレイしている選手は、各々のポジションと役割を明確に理解して試合に望んでいます。
その中でも、今回は「ボランチ」というポジションにスポットを当ててみようと思います。どのような役割をにない、どんな能力が必要なのか?ボランチについて詳しくご紹介します。
目次
サッカーで『ボランチ』って聞くけどポジションはどこ?
サッカーでは、自軍のゴールキーパーを除いて、自軍ゴール側からセンターラインまでを4分割や5分割にし、そこに割り当てられる選手をポジションと言います。
サッカー日本代表を例にすると、基本は4-2-3-1というポジションをベースにポジションが構成されていますが、この2に当たる部分がボランチというポジションになります。
さて、ボランチという言葉、実はサッカー用語には存在しないという事はご存知でしたか?
元々は、ポルトガル語で「Volante(ボランテ)」という単語から派生した言葉になりますが、このVolanteは日本語に直訳すると、船の舵やハンドルを意味します。ボランチはセンターバックからフォワードまで距離が離れ過ぎないように上手くバランスを取るという事から、この名前がつけられました。
ボランチの役割とは?
ボランチは、フォーメーションのバランスを常に取り続ける役割を担うと共に、ボールを奪取して素早くカウンターを仕掛けるタイプと、相手チームのデフィフェンダーの配置を見極め、効果的にパスを出してディフェンスラインを崩していくタイプの選手、ボールと人の配置を見ながら常に的確なポジションを取り、ラインをコントロールする選手がいます。
どれもチームには欠かせない存在で、1人でも欠けたら戦術のバランスがあっというまに崩れてしまいます。攻守に渡って常にゲームのバランスを整えるのがボランチの主な役割になります。
ボランチの重要性
サッカーの試合は常に上下運動を繰り返しているので、知らない間にディフェンダーとフォワードの距離が離れすぎてしまう事があります。これを間延びすると言いますが、間延びをしてしまうと、ボールが行き渡らなくなったり、相手にボールを奪われやすくなったりします。
これを未然に防ぐのがボランチです。距離が離れていると感じたら素早く間のポジションに陣取り距離を適切に保ちます。そして守備でも、後ろのディフェンダーがゴール側に上がり過ぎない、または下がりすぎないように的確な場所に陣取ります。
そして、チームではどこのポジションでボールを奪って攻撃に繋げていくかを予め決めています。フォワードやサイドハーフの選手がボールを出す方向に誘導していき、最終的にボールを奪うのがボランチです。
ボランチに必要な能力とは?
ボランチは、前と後ろ両方を見ながら、適切なバランスを取り続けますので、2手先3手先を読む能力が重要になってきます。更には、ボランチはフィールドの中央に位置している事が多いため、強靭なスタミナも必要になってきます。
セットプレイなどでは、後ろのディフェンダーも相手ゴール側に行く事が多いため、ボールを奪われた時のためにカウンターをさせない役割も担います。そのためどこに位置してファウルをもらわずカウンターを阻止するか、一瞬で判断しなければなりません。
失敗すれば、ロシアワールドカップ日本対ベルギー後半アディショナルタイムの悲劇が起こってしまいます。ここで、失点の原因を振り返ってみると、まずコーナーキック前のフリーキッカーとコーナーキックを蹴る選手は同一でした。ボールの軌道が一緒になりやすいため、相手はカウンターを狙いやすい立場になります。
コーナーキックを蹴る時、左側のコーナーキックエリアから左足で蹴りましたが、通常はゴールから逃げるような軌道になります。しかし、直前のフリーキックがあまりに素晴らしかったため、体が成功体験として脳に認識してしまったため、フリーキックとほぼ同じ軌道でゴールに向かってしまいます。
そして、世界最高峰のゴールキーパー『クルトワ選手』が見事にボールをキャッチ。カウンターを仕掛け、センターラインまで一気に駆け上がります。この時守備にいた選手は、予想以上の速さで突進してくるデブライネ選手を前に、攻撃を遅らせるかボールを奪取するかの判断が通常よりも一瞬遅れてしまいます。
そして、あっさりと交わされてゴールが決まってしまったのが、見事なカウンター攻撃の一部始終です。ボランチは、この時ファウルをしてでも止めるべきだったでしょう。もちろんカードは出ますが、失点する可能性を潰す事ができます。この判断が素早くできるかどうかが一流のボランチを分ける重要なファクターとなってきます。
ボランチを務めている選手は?
ここではボランチを務めている選手をご紹介していきます。
サッカー日本代表では、ジーコジャパン時代ボランチが飽和状態と言われるくらいメンバーが揃っていました。日本代表歴代キャップ数1位の遠藤保仁選手が試合に出れなかったくらい層が厚かったのです。
中田英寿選手に稲本潤一選手、小笠原満男選手に福西崇史選手、小野伸二選手に中村俊輔選手など早々たるメンバーが揃っていました。
現在では、山口蛍選手や板倉滉選手、高橋拳人選手や柴崎岳選手が日本代表の中心メンバーとなっています。
海外では、フランス代表のエンゴロ・カンテやイングランド代表のクリスティアン・エリクセン、ドイツ代表のトニー・クロースや欧州最優秀選手に選ばれたクロアチア代表のルカ・モドリッチが有名ですね。
過去には、元スペイン代表のシャビ、元フランス代表のマケレレ、元アルゼンチン代表のマスチェラーノ、元イタリア代表のピルロ、元イングランド代表のジェラードが有名です。
【今さら聞けない】サッカー用語『ボランチ』とは?役割や重要性を解説|まとめ
ボランチだけではなく、サッカーは頭と体を連動させて上下を絶え間なく動きます。時にはボールを奪い、時にはゴールを狙う、決して派手さはありませんが、黒子としてチームのバランスを取り続けるのがボランチです。
体力も頭も使う一見地味ながら大変な役割を担っています。
今度サッカーを観戦する際には、ぜひボランチというポジションに注目してみましょう。きっと見方が変わって今以上にサッカーを楽しんで観戦できます。